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Day by day 心にきざむ風景 人生いろんなことがあるけれど、今を大切に自分なりに生き抜こう

映画『北のカナリアたち』


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最近はなかなか劇場に行けないので
結構頻繁にDVDを
レンタルして鑑賞している。
大体1か月に邦画・洋画合わせて
平均10本ほど
鑑賞しているのですが
最近すごく印象に残ったのが
少し前2012年に封切った
湊かなえ原作『北のカナリアたち』
という映画でした。
(原作:「二〇年後の宿題」より)
阪本順二監督 主演は吉永小百合
ストーリーももちろん
感動的だったのですが

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心に焼き付いて離れないのが
いつも回想シーンの中に出てくる
雄大な礼文島の
利尻富士の姿でした。
そして北海道の厳しい自然
雪深い海辺の街・・・
川井郁子さんの
奏でるテーマ曲
『追憶の海』のバイオリンが
利尻富士の美しさと共に
耳に焼き付いて離れない・・・
温暖な地域に育った私たちには
想像もつかないような厳しい
でも本当に美しい自然の姿。
思わず地図で
調べてしまいました。

映画『北のカナリアたち』_e0028056_15301184.jpg

北海道の小さな海辺の街で
小学校の分校の教師を務める
川島はる(吉永)は、
すぐに泣いて奇声を発する
いじめられっ子信人(森山未來)の
声の美しさを他の生徒たちに気づかせ、
他の教え子真奈美、直樹、結花、
七重、勇と一緒に
合唱を指導する事によって、
いじめを無くし
交流を深めていった。
しかし、ある夏の日、
はるが生徒たちと行った
バーベキューで
予想だにしない悲しい事故が起きた。
その事故ではるは末期がんに
侵され郷里で闘病していた夫を失い、
子供たちは心に深い傷を負ってしまう。
はるは6人の教え子を残し、
後ろ髪を引かれる思いで島を去った。
20年後、東京で働くはるのもとに
思わぬ知らせが飛び込んで来る。
6人の教え子の1人、
鈴木信人がある事件を
起こしたというのだ。
はるはその真偽を確かめるべく、
そして空白の20年間の思いを
6人に伝えるため、
島に再び戻った。
そこで当時の生徒たち
一人一人に会い
絡まっていた糸を
ほぐしながら
真実を明らかにしていく。
かつて分校の子供たちの
成長した姿を演じる
宮崎あおい、勝地涼、松田龍平、
満島ひかり、小池栄子の演技も
とても良かったけれど
事件を起こしたかつてのいじめられっ子
信人を演じた森山未來の演技が、
吃音で不器用だが愛情深さが
にじみ出ていて
何とも言えない悲哀を感じさせ
映画『モテキ』やTVドラマ
『Water boys』とか
しか知らなかった私は
衝撃!すごい演技派だったんですね!

そしてやはり小百合さんの
感情を抑えたような
あの独特の静かな演技も
心にしみたし
夫役の柴田恭平さんの演技も
そして廃校になった分校で
先生と6人の生徒たちが
再会するシーン
最後のシーンも心にしみました。

それと同時に生き残されるものの悲哀・・・
がんの末期症状に苦しみながらも
妻を遠ざける夫への
妻の困惑と悲しみ
そのはるが偶然出会った
目の前で被害者を殺され
救えなかった刑事。
生き残されるもの苦悩が交差する。
何だか切ない想いがいっぱいになる。
北海道礼文の厳しい自然と
氷を削ぎ落とすようなバイオリンの音色。
ひとりひとり丁寧な人物描写。
阪本監督の緊張感のある
研ぎ澄まされた感性が
絞り出されるように
胸に迫る作品でした。

私たちがん患者は
反対に残していく者への
切なさでいっぱいになる。
ふと以前書いた映画
『リップヴァンウィンクルの花嫁』
の感想を思い出した。
あの時、岩井監督は
あまり乳がんの事を知らないのかな?
って思ったけれど
その後少し調べると岩井俊二監督は
2006年に敬愛する市川昆監督の生涯を
ドキュメンタリー映画として記録した
『市川昆物語』を発表されていた。
市川昆監督の妻和田夏十さんは
乳がんで闘病中も市川監督を支え続け
その様子は『市川昆物語』にも
描かれている。
岩井監督が乳がんの辛さを
知らないわけはなかった。
夏十さんは最後の最後まで
闘病しながら市川監督を
支えて燃え尽きた

そんな風に岩井監督の足跡を調べてみると
映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』も
全く違ったものとして感じられるようになった。
夏十さんや『北のカナリアたち』の
はるの末期がんの夫は
残していく者への愛や切なさで
イッパイだったけど、
反対に『リップヴァンウィンクルの花嫁』では
残していくものが何もない切なさに
あふれていて、それはそれで
どれだけ切ないか
だからこそ、自分の死を
見届けてくれる擬似パートナーを
メイドという名目で雇って
奇妙な同居生活を始める。
この映画には現代社会の
何でもない日常に共存する虚構が
少し滑稽に、でも切ないほろ苦さを
隠し味にして描かれていた。






























by budda88 | 2017-02-19 17:03 | 生きるということ | Trackback | Comments(0)